2003わがまち風景賞

菱の氷庫

所在地:桐生市菱町5-294
所有者:小林昭二氏

菱町5丁目、第二養護学校を過ぎると木立に隠れるように「菱の氷庫」がある。かつて、切り出された天然氷を貯蔵した土蔵である。
 菱町の住民が郷土を再発見するために作成した菱町カルタによると、「明治の初め、田中新次(三重県出身)は、冬に厚い氷をつくり、それを保存して売ることを思いつき、工夫したがうまくいかず、一年後、氷雪製造権利を森宗作、小林平内に売却、その後、平内は、氷池のそばに氷倉を建て保存に成功、桐生近在に大量出荷するまでに至った。昭和20年代に環境悪化、冷蔵庫普及のため廃業、氷池は一時スケート場として賑わった」と説明されている。
 道をはさんだ氷庫の向い側には、コンクリートで固められた氷池の名残が見られる。引き込まれた沢の水は今でも清冽である。
 かつて、ここは市街地から遠く離れた場所であり、山間の厳しい自然のなかで作られた氷が、住民の生活に変化と豊かさをもたらした。そんな時代の自然と産業、人々の生活が氷倉と氷池とが一体となった風景からうかがい知ることができる。


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