のこぎり屋根のあるまち・桐生からの発信
桐生の産業遺産の活用スタイルを考える


基調講演
「のこぎり屋根のあるまち・桐生からの発信」
■講師:吉田敬子氏

パネルディスカッション

「桐生の産業遺産の活用スタイルを考える
■コーディネーター■
阿部高久氏
■パネリスト■
佐野充照氏・渡辺慎二氏・北川紘一郎氏
萩原清史氏・吉田敬子氏

ファッションタウン桐生推進協議会と桐生商工会議所、(財)日本ファッション協会は、桐生市内に多く残る“のこぎり屋根工場”の活用を考えるシンポジウム「のこぎり屋根のあるまち・桐生からの発信」〜桐生の産業遺産の活用スタイルを考える〜を11月30日(土)桐生商工会議所ケービックホールで開催した。

桐生市には、伝統の織物産業の繁栄を背景に近代化遺産と呼ばれる建物群が多く残され、その中でものこぎり屋根工場は、桐生特有の産業風景を形成し、現在、二百六十棟ほどあり、全国一とされる。しかし、老朽化や廃業などで急速に失われており、桐生の特徴ある産業遺産を保存・継承していくため、その成り立ちから現状、新たな活用法や今後の展望などをシンポジウムで探った。






シンポジウムは、まず桐生市内ののこぎり屋根工場をすべて撮影した建築写真家・吉田敬子氏による基調講演「のこぎり屋根のあるまち・桐生からの発信」で幕を開けた。
吉田氏は、桐生だけでなく、愛知県蒲郡市や知多半島周辺、山梨県の富士吉田、都留市、北陸の城端町、小松市などの地域性豊かなのこぎり屋根工場を紹介。
その上で、「桐生ののこぎり屋根は、数の上でも全国一だが、一つひとつ意匠も異なり、デザインや美しさの面でも傑出している。是非とも残さなければならない桐生の風景」と強く訴えた。

第二部のパネルディスカッションは「桐生の産業遺産の活用スタイルを考える」をテーマに、京都西陣の佐野充照氏(西陣活性化実顕地をつくる会代表)、東京向島の渡辺慎二氏(向島学会会員)、桐生市で無鄰館を主宰する北川紘一郎氏(FT桐生まちづくり委員長)、市文化財保護課の萩原清史氏をパネリスト、吉田氏をコメンテータとし、FT桐生前まちづくり委員長の阿部高久氏がコーディネーターとなり進行。

西陣では、町家や織屋建ての工場の再生や工房化による新しいまちづくりが展開しており、向島では木造密集市街地に若いアーティストが集まり、新たなコミュニティを形成しつつある。各地の興味あふれる事例が報告され、桐生の北川氏は、自ら主宰する無鄰館の活動を通して新しいベンチャービジネスの可能性を示唆した。

桐生ののこぎり屋根工場について、佐野氏は「アーティストの活躍する場としては最高の建物。しかし、アーティストをまちおこしのツールとして使ってはいけない」、渡辺氏は「テーマパークとしえ面白い。点在することを利点としたまち歩きも出来る。素敵な空間を知ってもらうことから始めたらどうか」などの意見が出された。



シンポジウムには、会議所関係者や協議会のメンバー、市民、のこぎり屋根工場の所有者、東京向島のメンバーなど約百六十人が詰めかけ、熱心に聴講、関心の高さを伺わせた。

同協議会などでは、今後、シンポジウムの内容収録も含めたのこぎり屋根に関する体系的な報告書を作成し、保存活用に向けた基礎資料としていく。

なお、このシンポジウムは日本自転車振興会の補助金を受けて実施した。

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